熱血ライター 神山典士がゆく

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« 「フレンチの王道・シェイノの流儀」読書感想文大会~発表会~ | トップページ | 「フレンチの王道・シェイノの流儀」読書感想文大会~その3、水上さん、西野さん、猪野さん »

July 26, 2016

感想文大会その2、藤原さん、関根さん、窪谷さん

「フレンチの王道」感想文
藤原 温恵

 「フレンチの王道」とは、どんな道であろうか?本を手にしたとき、最初に思ったことである。
 私はこの本を読んで、良かったと思う。理由は3つある。
第一に井上の歩んできた道が真に王道であり、強い信念と情熱を持って日本に伝えたフランス料理の真髄を見たからである。真正面から突き進んだ井上の苦労は並大抵ではなかったが、後に開花する料理人としての才能を信じ、とにかく頑張り抜いた。どんな状況であれ、やる人は、やり遂げる。
自分がしっかりしていれば、挫折することなく、「なりたい自分になり得る。」という人間の本来の姿を受け取ることができた。これは、料理の世界だけでなく、私たちの日常生活の中でも言える。多くの人は、小さな障害を理由に、志を断念することが多い。
井上は、自らの才能と根性、人の好意や天からの幸運など、あらゆるものを味方につけ、知恵を使って逆境を突破した。自分の歩むべき道、自分のなりたい姿を思い描き、進んでいく勇気を持った井上は立派である。本当にしたいことがあれば、本気で腹を決めて、文句を言わず取り組むべきだ。自分の生き方を見直す作業を改めて行うことができた。
 
第ニに、美味しい料理は、万国共通で人に幸福感を与え、食べ手の幸福は、料理人の食べ手に寄り添う繊細な感性から生まれてくる事実を感じることができたからである。
日頃から、心躍るような料理に遭遇したいと思っている。たぶん、私だけでなく、自分好みの素晴らしい料理をいただき、その味を楽しんでいるときは、例外なく、誰もが幸福な気分になるだろう。絶品ソースは食べ手の心のカーテンを薔薇色に変える力を持っている。食べ手の幸福は、研究熱心な料理人の技術と愛によって料理を通して提供され、至福の時、感動的なシーンとして一生の宝となる。
客と料理人の奏でる曲もまた、レストランの空気に跳ね返り、極上の雰囲気を醸し出しているはずだ。井上の料理は、本気で料理に向き合う井上の本気の結晶であり、たゆまぬ進化を重ねてきた井上そのものである。今回、本物の井上のフランス料理、特にソースを食すことができる喜びを胸に秘め、食事会の日を心待ちにしている。

第三にフランス料理の歴史を具体的な登場人物を交えて知ることができたことである。
フランス料理の歴史と言えば私にとって、ワインを勉強したときの一つのパートで、文字で表された内容でしかなかった。しかし、この本でパリのマキシムでの社交界の様子を読み、想像の翼が大きく広がり、場面が映像化され、楽しくて仕方がなかった。なんて優雅な世界なのか。1つ1つのテーブルにはドラマがあり、生きている人がいる。
そう考えると、先日読んだ小説の食卓なども、リアルに想像でき、楽しみの幅が広がる。あまり深く考えたことがない歴史を少し知るだけでも、空気が変わり、味わいに深みが出る気がする。

最後に、フランス人の食に対する思いは強く、当時のフランス料理はフランス文化そのものと言っていいくらいの質の高さを保っていた。
井上は、フランスで修業を重ね、貴族文化の残る華やかな社交界の料理をも担当した経験を持つ数少ない料理人の一人である。彼は、フランスで多くを吸収し、日本にフレンチの王道を伝えた。彼の強い信念は先見の明があった。本物のフランス料理を貪欲に追及し、イメージし、努力し、形にし、進化させていく。井上の生き方は、誰でも真似できる簡単なものではないが、生きていく上での指標にしたい姿である。そして、彼の仕事は日本のフランス料理界における素晴らしい功績である。

2


関根尚子

『フレンチの王道 シェ・イノの流儀』を読んで さて、ここ最近目に触れている活字と言えば、新聞かもしくはテキストなどの解説書ばかりで、このような書籍を手にすることなどほとんどなかった私でしたので、本書にめぐり会うことができた、そのことにまず感謝したいと思います。
自分の思いを押し通し続けていいものか、自分らしくその道を貫こうと思ってはいても、少々年齢を重ねただけに根拠のない自信などは微塵もなく、このところ悶々と悩む日々を過ごしておりました。何から紐解いていいものやら、というより逆に言えば大量の情報がありすぎる現状に反発していたのか、本に拠り所を求めてみるなどということは考えにも及びませんでした。
なので、本書についてはフランス料理という魅力的な言葉にのみ誘われて読み始めたのが事実です。 ところが、読み始めてすぐより歴史的冒険小説を読んでいるようなワクワク感を味わってしまい、ついつい時間を忘れて読み進むのと同時に、悩みの闇の中に漠然と明かりが見えてきたような感じを受けました。
井上シェフの言葉の中にそれはそれは数多く出てくる『お客様』という言葉、そこにこそ答えが詰まっているのではないか、という思いです。 私の立場で言えばクライアント様になるのでしょう。
私は数か所で運動に関する指導をさせていただいています。クライアント様はいろいろな情報から私のクラスを選んでくださり、ご自身の要求を満たすためにお越しになるわけです。私はそれにお応えするべく、その日その方の様子を伺いながらこれだと思うプログラム内容をご提供できるように心がけているつもりです。お料理のルセットのようなプログラムパッケージもありますので、それのみのクラスもできないわけではありません。
ただ、私一人で大人数をまとめてドーンと受け入れていてはお一人お一人には目が届かなくなりますし、少ない人数でクラスを続けようとすれば赤字覚悟となります。でも私はお一人お一人と関わり、細かな見方のできるクラスを持ち続けたいと考えていました。『お客様』がお一人お一人違うというシェフのお言葉通り『クライアント様』もお一人お一人違うのです。
しかしその反面、自腹を切り続けるようなクラスを続けて良いのかと少々迷いもあっただけに、本書を読み進むうちに、今このままでいけるところまでいこうと考えられるようになってきたのです。自分の信念のためにも、です。 スピード感があり、はっきりとした意志の感じられる数々の言葉や文から、シェフご自身がトロワグロ氏から感銘を受け、人生をかけフランス料理というその本物を提供する者としてその頂を目指す、という思いが鮮烈に伝わってきました。その信念の強さを感じ続けることのできた一冊でした。
ルセットを記録することのみならず、師の姿を映像ごと記憶することができるなんて、やはり井上シェフは天才なのだと思います。でも『見て覚える』『技は見て盗んで自分のものにする』のは昔から修行の定番と言われているのですから多少歳をとっていても訓練すれば私にもできることがあるかもしれません。機会があればチャレンジしてみようと思います。
『料理人はお客様よりもおいしいものを食べる』。まず自身がしっかり味わえる料理人でいようという姿勢も見習いたいと思います。そしてそれを後進にも伝え託していこうとされる姿にも豪快愉快なお人柄と共に人間そのものの大きさを感じました。シェフが実は相当腕白でけっこうわがままな頑固者なのではないか、とは想像の域を超えませんが、いつでも必ず『人の中』にいらしてお客様もスタッフも皆お一人の『人』としてシェフが大切にお付き合いをされていることに間違いはないことはとてもよくわかりました。
お決まりのHow toでなく、めぐり合う環境や人々の中でその時々に自身がどうすべきなのか、どうしたいのかをしっかり見極めて、そこに進むべく努力し続けているお姿がやはり何よりすばらしいと思います。ジャンルは違っても何かを人様に提供していこうとする志を、その生き方から伝えていただいているような気がしています。
本書を読み、あらためてシェ・イノに赴き、またさらに本書をもより深く味わう、そんな若い方々が増えていってくださることを今期待せずにはいられません。

Photo


窪谷みちこ

実をいうと、友人に誘われて神山さんの著書出版記念のお祝いに参加することになるまで『シェ・イノ』というお店を知りませんでした。
なにせ、本格的なフランス料理をいただくのは何年ぶりかというくらい、ましてやグランメゾンと呼ばれる名店での食事などこの人生でほとんど経験したことがありません。なので、こんな私が一流のお客様を魅了し続けてきたシェ・イノの料理を食べていいのかと少したじろいでいるのがほんとのところです。
私自身食べることは大好きで、フレンチ、イタリアン、スペイン料理など、月に1、2回程度ですが友人とともに神楽坂や職場のある丸の内、銀座、そして最近はおしゃれすぎて気後れしていた表参道にもついに足を踏み入れ、行ったお店は40軒を超えるくらいでしょうか。毎回美味しく楽しく時を過ごしますが、お店のリピートはほとんどしません。なぜなら、そこでしか食べられない料理に出会ったことがないから。ほとんどの店は似たり寄ったりで、どこでもそこそこのレベルのものは食べられます。だったら初めて行くワクワク感があったほうがいい、という訳で次々と新しいお店を開拓しているのです。
年齢を重ね人生を重ね大した苦労ではないけれどいろいろなことを乗り越え、50代となった今、そろそろ贅沢しても誰にも文句は言われない年齢になったのかな、とポジティブ思考。そんな折、『フレンチの王道 シェ・イノの流儀』という本に出会ったのです。テーブルクロスがかかり、ソムリエがお料理にぴったりのワインを選んでくれて、シェフがテーブルに御挨拶にまわってくる、そして最高の料理、そんなグランメゾンと呼ばれるお店、憧れの一言以外にありません。
もちろんワインリストを見せられても、どこのなんという品種のどんなワインがどの料理に合うものかなどさっぱりわからないという状態です。そろそろ自分の時間を十分楽しみたいと思っていた時にワインやフレンチを勉強する会に誘われ、今まさに勉強しているところではありますが。そんな私に今回のような素晴らしい機会がやってきたというわけです。
その期待度がどれだけ高いものか・・・トロワグロ、もちろん名前は知っています。その天才ソーシエの元で修業された井上シェフの手にかかると、あ~どんなソースが生まれるんだろうと考えただけで幸せな気持ちになります。料理がこんなにも人をしあわせにできるのなら、私も家族にもっと手をかけた美味しい料理を作らなくちゃ!と思うのですが、出汁一つにしても最近は顆粒だしや、コンソメの素など便利なものがあるのでついつい頼ってしまいます。ソース・アルベールはこんな私には想像もつかないくらい美味しいのでしょうね。
この本を読んで不思議に思ったことは、なぜシェフはここまでフレンチに没頭したのか、自分が伝統を引き継ぎ、日本風にアレンジするのでなく本場のフランス料理を継承していくことに人生をかけていらしたのか。多くのフレンチのお店が日本風フランス料理を出しているのに・・・。
これからは料理ひとつひとつには伝統があり、料理を作るシェフたちの思いがあるんだということを心にとめて、食事を楽しみたいと思います。そして、シェ・イノのジビエ料理は今年中に食べたい料理の第一候補とさせていただきます。

Xikfxc

2016 07 26 [美味伝承 サリー・ワイルとその時代] | 固定リンク

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